TiDBがMariaDBに代わる実用的なMySQLである理由

※このブログは2023年6月9日に公開された英語ブログ「Why TiDB is a Practical MySQL Alternative to MariaDB」の拙訳です。

MySQLは依然として地球上で最も人気のあるオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム (RDBMS) の1つです。多くの企業、コントリビューター、利用者がそれをサポートする製品やサービスを構築しているため、強力なコミュニティとエコシステムが存在します。さらに、多くのツールやMySQL代替ツールはデータベースのコードベースを使用するか、完全なワイヤプロトコル互換性を維持します。このブログでは、2つの人気のあるMySQL代替手段であるMariaDBとTiDBについて詳しく説明します。両方のデータベースの利点と制限について説明します。また、強力な水平拡張性と高性能な分析機能により、TiDBがより強力で実用的な代替手段としてどのように機能するかについても明らかにします。

MariaDB：より革新的でコミュニティフレンドリーなMySQLの代替手段

MariaDBは、Sun Microsystems社による買収後に作成されたMySQLのフォークです。MariaDBの重要な目標の1つは、オープンソースのコミュニティ主導型のMySQL互換データベースを継続的に利用できるようにすることです。既存のMySQLアプリケーションおよびツールとの互換性を維持することに重点を置き、MySQLからMariaDBへのシームレスな移行を可能にします。この互換性により、開発者や組織はMySQLへの既存の投資を活用しながら、MariaDBが提供する機能強化や改善の恩恵を受けることができます。

MariaDBはイノベーションと新機能の継続的な開発に重点を置いています。コミュニティは機能強化、バグ修正、パフォーマンスの最適化を導入することで、プロジェクトに積極的に貢献しています。この協調的なアプローチによりMariaDBは急速に進化し、この分野において常に進歩しながら最新の状態に保たれています。

コミュニティ主導の開発

イノベーションはMariaDBの強力なコミュニティ主導型開発モデルから生まれます。これは、開発がコミュニティの貢献やフィードバックにオープンであることを意味します。これにより開発サイクルが短縮され、ユーザーのニーズを満たす製品の応答性が向上しました。一方、Oracle MySQLはより集中化された開発プロセスを持つOracle Corporationによって開発および管理されています。

包括的なエンタープライズ向け製品

企業向けにMariaDBはMaxScaleとColumnStoreを提供しています。これらの製品はそれぞれ分析用に水平方向の拡張性とカラム型ストレージを提供します。Oracle MySQLにも同様のソリューションがありますが、MariaDBほど包括的ではありません。

SkySQLはデータベースのメンテナンスの負担を軽減し、開発者がビジネスの革新に集中できるようにするMariaDBのマネージドサービスです。

全体的に見れば、これらのユニークな製品によりMariaDBは高度な機能と信頼性を提供できるリレーショナルデータベースを探している開発者にとって強力な選択肢となります。これはMySQLの高い互換性を持つデータベースが必要な場合に特に当てはまります。

MySQLの代替案におけるMariaDBの制限

MySQLの代替としてのMariaDBにもまだ欠点はあります。一部のアプリケーションシナリオでは、開発者は次の制限に遭遇する可能性があります。

拡張性

MariaDBはモノリシックなデータベースです。つまり単一マシン上のリソースは限られることになり、パフォーマンスと信頼性に影響を与える可能性があります。その結果、開発者はビジネスが急速に広まったときにパフォーマンスの壁にぶつかる可能性があります。

MaxScaleを使用すると、MariaDBは単一ノードでの構成よりも適切に拡張できます。ただし、自動シャーディングやデータパーティショニングなど、他のデータベースにある高度な拡張機能の一部がまだ欠けています。シャーディングによりアプリケーションは非常に複雑になり、新しい機能の開発とリリースが遅くなります。一方でシャーディングは複雑さをもたらし、バックアップ/復元、スキーマ変更、負荷分散などのデータベース運用コストも増加します。

信頼性

MariaDBには高可用性のための組み込み機能はありません。ただし、レプリケーション、クラスタリング、Galera Clusterなど、いくつかの高可用性ソリューションが提供されています。レプリケーションはデータベースの複数のコピーを作成し、それらを相互に同期させて、1つのコピーに障害が発生しても別のコピーが引き継ぐことができます。クラスタリングは複数のサーバーをグループ化して1つのサーバーのように機能させることができます。これにより1つのサーバーに障害が発生しても、別のサーバーが引き継ぐことができます。Galera Clusterはすべてのノードがプライマリノードとして機能できるマルチマスターレプリケーションソリューションです。そのため1つのノードに障害が発生した場合、別のノードがプライマリノードとして引き継ぐことができます。

ただし、これらのソリューションには欠点が無いわけではありません。レプリケーションに関する大きな問題の1つはデータ損失の可能性です。変更が他のすべてのノードにコピーされる前にノードに障害が発生すると、それらの変更は失われます。さらにレプリケーションの設定と管理は複雑になる可能性があり、データベースの複数のコピーを維持するために追加のリソースが必要になります。

クラスタリングには特に拡張性に関して課題もあります。クラスタに追加されるノードが増えると、ノード間の合意を維持するために必要なオーバーヘッドが増加し、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。さらにクラスタリングでは、すべてのノードが正しく動作し、相互に同期していることを確認するために慎重な構成と管理が必要です。

分析処理の制約

並列実行エンジンとColumnStoreを備えたMariaDBは、より高度なクエリの処理においてMySQLよりも優れています。ただし、その並列実行は依然として単一マシン上のCPUリソースとメモリリソースによって制限されます。ColumnStoreには独自の欠点もあります。

1つはスキーマ設計の柔軟性の欠如です。ColumnStoreはデータを行ではなく列に格納する列指向のストレージエンジンです。これにより分析クエリのパフォーマンスは向上しますが、スキーマを事前に定義する必要があり、簡単に変更できないことも意味します。このことは変化するデータ要件に迅速に適応する必要がある企業にとっては問題となる可能性があります。

最後に、ColumnStoreはリアルタイム分析やトランザクション向けに設計されていません。大規模なデータセットのバッチ処理を目的としています。リアルタイム分析を実行する必要がある企業やトランザクションの一貫性を必要とする企業にとっては、最適なソリューションではない可能性があることを意味します。

モノリシックなレガシーアーキテクチャ上に構築

MySQLと比較するとMariaDBには多くの革新がありますが、依然としてMySQLコードベースを保持しています。つまりアーキテクチャの中核は依然として単一ノードであり、マイクロサービスなどの最新のアプリケーションのニーズを満たすことができません。小さな機能を追加するのは簡単ですが、大幅な変更を加えるのは非常に困難または不可能になる場合があります。透過的シャーディングや組み込みの高可用性 (HA) などの一部の機能は、グローバルなスケールと強力な一貫性を必要とする最新のアプリケーションにとって必要な機能です。これらの機能をMariaDBの単一ノードアーキテクチャに組み込むのは簡単ではありません。

TiDB：MariaDBの制約に直面した場合の実用的なMySQLの代替手段

TiDBはMySQLと互換性のある高度なオープンソースの分散SQLデータベースです。組み込みの水平拡張性と高性能な分析機能を提供します。結果として、より最新で拡張性のあるソリューションに移行する開発者にとって、MariaDBに代わる強力なMySQLになります。このセクションでは開発者にとって魅力的な選択肢となるTiDBの主な機能のいくつかと、MariaDBとの比較について説明します。

MySQL互換性

TiDBの主な利点の1つは、MySQLとの高い互換性です。これは、開発者がすでに知っている同じツールやアプリケーションの多くをTiDBで使用できることを意味し、既存のシステムへの統合が容易になります。さらにTiDBはJava、Python、Goなどの幅広いプログラミング言語をサポートしているため、開発者にとって多用途の選択肢となります。

組み込みの水平拡張性

TiDBに組み込まれている水平拡張性は最も強力な機能の1つです。TiDBを使用すると、開発者はデータベースを手動でシャーディングすることなく、アプリケーションの成長に合わせて簡単に容量を追加できます。このため、高い拡張性と柔軟性を必要とするアプリケーションに最適です。MariaDBはMaxScale製品と同様のソリューションを提供していますが、TiDBの分散ネイティブアーキテクチャは、アプリケーションをより拡張し柔軟にします。

強力な一貫性と技術的な複雑さの軽減を備えた高性能な分析

TiDBのもう1つの重要な機能は、高性能分析エンジンであるTiFlashです。TiFlashは大規模なデータセットに対して高速なアドホッククエリを提供する分散カラム型ストレージエンジンです。TiDBはTiFlashとシームレスに連携するため、コンピューティング層とストレージ層の間でデータを簡単に移動できます。このため、TiDBは高速分析機能を必要とするアプリケーションにとって最適な選択肢となります。

TiFlashはセットアップが簡単で、TiDBのOLTP機能とネイティブに統合されています。自動データレプリケーションとリバランスをサポートし、耐障害性とデータの可用性を確保します。TiFlashは行ストアと列ストアの間で強力な一貫性をアプリケーションに提供できます。また、分析処理に重要な超並列処理 (MPP) などの高度な機能もサポートしています。MariaDB ColumnStoreと比較してTiDBはより拡張性に優れ、使いやすく、強力です。

活発なオープンソースコミュニティ

TiDBには、プラットフォームに驚異的なイノベーションを提供する強力で活発なオープンソースコミュニティがあります。このコミュニティはデータベースが最新の状態に保たれ、最新の技術や標準が取り込まれているのかを確認するのに役立ちます。さらに、コミュニティはアプリケーションの中でTiDBの使用を検討している開発者に豊富なリソースとサポートを提供します。

包括的な移行ツール

TiDBでは開発者がMariaDBまたは他のMySQL代替製品からTiDBに簡単に切り替えることを可能にする、包括的な移行ツールのセットが提供されています。これらのツールにはDM (Data Migration) やLightningが含まれます。

これらのツールを使用すると、開発者はアプリケーションのダウンタイムや中断を最小限に抑えて、データとスキーマをシームレスに移行できます。TiDBの移行ツールは十分に文書化されており使いやすいため、TiDBへの移行プロセスがスムーズかつ簡単になります。

TiDB Cloud

マネージドクラウドソリューションを探している開発者向けに、TiDBはオンプレミスインフラストラクチャを必要とせずにTiDBのすべての利点を提供するフルマネージドでスケーラブルなクラウドサービスであるTiDB Cloudを提供しています。TiDB CloudはMariaDBが提供するマネージドクラウドサービスであるSkySQLと同様の機能と利点を提供します。TiDB Cloudを使用すると、開発者はデータベースの管理とメンテナンスを専門家に任せながら、アプリケーションの構築に集中できます。

TiDBについて知っておくべきこと

MariaDBは多くの開発者に愛される素晴らしいデータベースです。多くのシナリオで非常にうまく機能します。ただし、MariaDBでは処理できないシナリオの場合はTiDBが有効な選択肢となります。

TiDBにはMySQL互換データベースカーネル、同等のXpandおよびColumnStoreソリューション、マネージドクラウドデータベースサービスなど、MariaDBのほとんどの機能が含まれています。これらすべてを合わせると開発者の作業が大幅に楽になります。

非常に大規模で信頼性の高いインフラストラクチャを必要とする最新のアプリケーションにとって、TiDBは実用的なMySQLの代替手段であり、将来性のある機能の強化も提供します。

TiDBを体験するには、無料サインアップよりTiDB Serverlessをお試しください。日本語ドキュメントのTiDBクイックスタートガイド、または無料オンライントレーニングのご利用をお勧めします。ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。 また、GitHubにて問題を報告することもできます。