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※このブログは2025年10月27日に公開された英語ブログ Rethinking Scale: TiDB’s Evolution Into an AI Agent Database」 の拙訳です。

最近、AIaaS、Web3、FinTechなど、さまざまな業界の顧客とお会いする機会がありました。どこへ行っても、会話の焦点は常に一つの話題に集まります:AIです。

誰もが同じ質問をしています。「AIは私たちのビジネスをどのように変革するのか?そしてTiDBはこの変化をどのように取り入れているのか?」

そこで私は、最近考えていたことを共有し始めました。

「AIの時代が到来しました」 と私は言いました。「しかし本当の変化は、データベースの主要な利用者が人間ではなく、AIエージェントになるという点です。」

ここで、多くの顧客は一瞬言葉を止め、考えを整理し始めます。

私はさらに続けます。「AIエージェントは、システムの構築方法を変えます。私たちは従来の予測可能なルールベース設計から、はるかに動的で非決定論的な設計へと移行しつつあります。」

この時点で、会議室は静まり返ります。人々がその意味を咀嚼しているのが、目に見えるようです。

決定論から不確実性へ

かつてのシステムは予測可能でした。開発者はスキーマを設計し、クエリを書き、あらゆる細部をコントロールしていました。

例えば、Eコマースサイトを構築する場合はどうでしょうか?
まずはproductsテーブルを作成します — id、nameprice
リストページが必要ですか?単に次のように実行すればよいのです:

SELECT * FROM products ORDER BY id;

すべては設計上、決定論的でした。しかし、AIの時代では、そのルールは崩れます。今ではエージェントにこう指示するだけです:「ウェブサイトを作って」。

すると、今まで見たこともないテーブルやSQLクエリをエージェントが生成します。1分後にはそれらを削除して、再度試行します。このように、決定論的ロジックから適応的な実験へと移行する変化は、システム構築の方法を変えるだけでなく、「スケール」 の概念そのものを再定義します。

そして、大抵ここで誰かが重要な質問を投げかけます。「それって、TiDBにはどういう意味があるのですか?」

これは正しい問いです。なぜなら、人間主導のシステムからAI主導のシステムへの移行は、あらゆるレベルでスケーラビリティの定義を変えるからです。

スケーラビリティの新たな3つの課題

AIエージェントと連携するためには、データベースは次の3つの新たな次元のスケーラビリティに対応する必要があります:

  1. データ量と同時実行性のスケーラビリティ:数百万のAIエージェントが同時に読み書きし、ペタバイト級のデータを生成します。かつて 「OLTPスケール」 と呼ばれていた規模は、今やAIエージェントスケールです。
  2. スキーマのスケーラビリティ:各エージェントが独自のスキーマを定義します。単一のシステムで数百万のユニークなテーブルを管理する必要が出てきます。従来のデータベースが苦手なのはデータ量ではなく、メタデータ管理です。
  3. SQLのスケーラビリティ:AI生成のSQLは予測不可能で、複雑かつ常に変化します。
    課題は単に 「動くかどうか」 ではありません。「効率的かつコストを抑えて動作できるか」 が問われます。

これらは、従来のデータベースが設計上解決できなかった問題です。

偶然の幸運:TiDBがAIaaSデータベースに進化した経緯

顧客から 「なぜTiDBはこれほどの負荷に耐えられるのか」 と聞かれると、つい笑みがこぼれます。

面白いのは、TiDBは最初からAI-as-a-Service向けに作られたわけではないことです。自然と、AIaaSにぴったりのデータベースへと進化したのです。

数年前、Databricksからこんな問い合わせがありました。「100万テーブルをサポートできますか?」

私たちは考えました。「そんなの無理だろう。OLTPデータベースでそんなに多くのテーブルが必要なことなんてあるのか?」

その直後、Atlassianからさらに大きなリクエストがありました。「1,000万テーブルを扱えますか?私たちはForgeという、サードパーティの開発者が自分のアプリを作れるプラットフォームを構築しています。」

Atlassianによると、数万人の開発者がそれぞれ独自のスキーマを持つアプリを構築し、すべて同じデータベース上で動作させる必要があるとのことでした。

Forge以前のAtlassianにおける、テナントごとに1スキーマ (データベース=スキーマ)を割り当てるモデルの典型的な図

最初はとても無茶に思えました。しかし考えれば考えるほど、それが理にかなっていることに気づきました。そこで、私たちは実際にそれを構築しました。

そして、ある時点で興味深いことに気づきました。それは、一見風変わりなSaaSのスケーリング問題に見えたものが、実は未来の予兆だったということです。

Forge内の各アプリは、それぞれ独自のスキーマ、独自のワークロード、独自のデータを持つ、まるでAIエージェントのように振る舞いました。

このSaaSの課題を解決することで、私たちは知らず知らずのうちに、AI時代が本格的に始まる前からAI駆動のスケーラビリティの基盤を構築していたのです。

なぜTiDBはAIaaSの世界に適しているのか

端的に言うと、TiDBの設計はAIの新しいスケーラビリティモデルに自然に適合しているのです。

  • 水平スケーラビリティ:オンラインスケーリング、自動シャーディング、極端な同時実行下でも安定したパフォーマンス
  • スキーマのスケーラビリティ:AtlassianのForgeでの本番運用で実証済み、数百万テーブルをサポート
  • SQLのスケーラビリティ:混合ワークロード対応の堅牢なSQLエンジン、リアルタイムRU (Request Unit) メトリクスにより、エージェントがパフォーマンスフィードバックを学習し自己最適化が可能。

TiDBは単にAIワークロードを処理するだけでなく、AIネイティブな振る舞いを可能にしているのです。

今後の展望と次のステップ

AIaaSは、データベースの利用者や利用方法から、「スケール」 の概念そのものに至るまで、あらゆるものを変えます。

TiDBは最初からAIaaS向けに設計されたわけではありません。しかし、長年の実運用での進化を経て、AIaaS時代に最も自然でスケーラブルなデータベースへと成長しました。

そして私の未来のビジョンはこうです:すべてのAIエージェントが独自のデータベースを持ち、そのデータベースはTiDBになるということです。

TiDBの分散SQLアーキテクチャ、実証済みのスキーマスケーラビリティ、適応型クエリエンジンは、この新しいAI駆動の世界に最も自然に適合します。

次世代のAIネイティブアプリケーションを構築するなら、まずはエージェント、スケール、インテリジェンスのために作られたデータベースから始めましょう。


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